商業施設『ATC』の20周年記念事業の一環として、併設の海沿い公園・ウミエール広場のイルミネーション制作を行いました。 全長約400mという規模感に加え、海面に移り込み増幅する光の効果が得られるのはこのロケーションならでは。 音楽と連動したイルミネーション演出が可能で、季節感やイベントを盛り上げる重要なアイテムとしてご活用頂いています。
2014年~
商業施設
当時、市内中心地には新しい商業施設が次々とオープンし、当施設は集客において苦戦を強いられていました。
大型の催事ホールを併設していることから、鉄板イベント会期中は賑わいが生まれるものの、イベントが終了する夕方以降は人の引けも早く、まして平日は市職員が利用する昼時を除けば閑散としていました。
商業施設の重要な収入源はテナントの賃料であることから、集客力の低下はテナントの商売が成立しなくなるばかりではなく、施設そのものの存在を危うくする事態です。
さらに、この施設の建物形状も特殊でした。回遊を促すらせん状の作りではなく、3棟にわたって続くセンター一本動線のとにかく横長い形状。
一度端まで行き切れば、今見てきた記憶に新しい店の間を通って戻らねばならず、ウィンドウショッピングの高揚感を演出しにくい。
滞在時間を延ばし購買意欲を沸かせるためには、止まり木となる場所が必要でした。
海沿いの公園という最高のロケーションは本来強みとなるはずですが、当時そこにはただ芝生と植栽が広がっているだけで、特別な興味をそそられるものはありませんでした。
施設内から海を眺められる大きなガラス面も少なく、仮に表に出たとて、横に広く奥行きのないそこは心を緩めて休憩できる空間ではなかった、というのが事実です。
そんな中迎えた20周年の節目。
記念事業の企画をクライアントから求められた際、我々がご提示した方向性は「一時的な集客から、継続的・安定的な集客へのシフト」でした。
立地条件から考えて、この施設のロイヤルカスタマーとなり得るのは地元住民。
都心の大型商業施設における話題性重視のイベントではなく、利用者の暮らしの中に施設が溶け込む、つまり、地元住民と施設の距離をより縮める為の施策が必要だと考えました。
週末を中心に集客する打ち上げ花火的なイベントでは販促効果は続かず、本来テナントのことを考えれば、課題の中心は平日や夜の集客でした。
さらに、そこには原点回帰の思いもありました。
買い物だけを目的に来る一般的な商業施設とは異なり、ここは大阪市が地元商業の活性化を目的に作った、ものと人が行き交う「トレードセンター」。地元住民を中心に人が集い憩う場所として生まれた使命です。
この先長く施設と地域の発展に貢献していくために、今施設は何を備えればいいのか?
現存する様々な課題を総合的に鑑み、我々がご提案したのが「海沿いの公園のリニューアル」でした。
20周年のいま取り組むべきは、一時的な集客や利益といった目前の課題ではなく、マラソンのように息切れせずペース配分をしながら長きにわたって遂行できる施策だ、という考えです。
公園は、流行り廃りなく老若男女どなたにでもご愛用いただける公共スペースです。
日常、子連れファミリーにお使いいただけるピクニック広場、シニアの方々のお散歩コースにしていただける花壇エリア。
そして施設のアイコンでもあるパームヤシを彩り、ファミリーやカップルを夜の海辺に誘うイルミネーション。リニューアルした公園は様々な顔を持っています。
朝から晩まで夫々の目的で利用者を呼び込み、施設在時間の延長に貢献する、施設の集客装置へと生まれ変わりました。